ないものねだりとは、自分にないモノを欲しがるという人間の真理を説いたことわざです。
すでにあるものは欲しくならない。ないものが無性に欲しくなる。
そういう人間の本能を説明することわざです。(昔の人って、こういったことざわをいくつも残していて、賢いですね。)
似たことばでは「隣の芝生は青く見える」があります。(少し意味はズレますが、)
英語では「crying for the moon (月に泣く)、asks for the moon (月にお願いする)」と言います。
本記事では、人間の本能として強固な「ないものねだり」について検討していきます。
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【前提】ないものねだりは人間の本能
人間は、欲深い生き物です。と同時に、嫉妬する生き物でもあります。
自分にできないことを他人ができるとすぐ羨ましくなりますし、自分が持っていないものを他人が持っているとすぐ欲しくなります。
人間の欲求は、マズローの欲求五段階説で説明することができます。
■マズローの欲求五段階説
・人間には「生理的欲求」「安全の欲求」「社会的欲求」「承認欲求」「自己実現の欲求」の5つがある
・下位の欲求が解決されると、上位の欲求へだんだんと移行していく (生理的欲求→安全の欲求→社会的欲求→承認欲求→自己実現の欲求)
(例) 生命の安全が確保されていないのに、自己実現の欲求が優先されることはない
①生理的欲求:生命を維持するため必要な「食べる」「寝る」という欲求
②安全の欲求:安全な場所で暮らしたいという欲求
③社会的欲求:集団:家族をつくり、どこかに所属したいという欲求
④承認欲求:他者から存在価値を認められたいという欲求
⑤自己実現の欲求:能力や可能性を発揮したいという欲求
いわば、人間の生まれながらの本能です。
人間は、なぜ嫉妬してしまうのか
人間は、さまざまな嫉妬を抱えています。
■嫉妬の種類
・個人の能力 (①スポーツの才能 = 運動神経、②勉強の才能 = 頭のよさ)
・人間関係 (より多くの人に囲まれているかどうか)
・社会的地位 (会社、年収、家柄など)
上記に見るように、人間は、優秀でありたい生き物、人から愛されたい生き物です。
これは、人間がより高次の欲求を求めるようになった結果でもあります。
マズローの欲求五段階説にもあるように、人間以外のほかの動物は、生態系の弱肉強食の中で生きており、生命の危険が完全に保証されているわけではないため「承認欲求」や「自己実現の欲求」までは持ち合わせていません。
あるのは「生理的欲求 (獲物をとらえ外的から逃げる)」「安全の欲求 (暮らしやすい土地を縄張り・巣とする)」「社会的欲求 (群れをつくり共に行動する)」の3つです。
集団の中で劣等感を感じ、他者に嫉妬するのは「承認欲求」がはたらいているため。人間特有の欲求なのです。
(ほかの動物は、生きて安全に暮らせて、群れが作れればいいので、他者と自分を比べたり、嫉妬したりすることがありません。そこが人間を人間たらしめている、明確な違いでしょう。)
ないものねだりの人生にしないために
「動物のように生きろ!」とまでは言いません。
そもそも「ないものねだり」「嫉妬」という感情それ自体が人間特有なので、動物と比較のしようがありません。
では、どうするべきか。
それは「自分の役割・立ち位置を明確にすること」です。
人間には能力に差もあれば、組織の中のポジションによっても求められていることが違います。
この部分の理解を間違えると、痛い目に合います。
「自分には何でもできる」と思ったり「〇〇にできて自分にできないことはない」と思うことが、嫉妬につながります。
ないものはない。それは、変えられないのです。
自分の限界、自分の得意分野、苦手分野を理解できていれば、ないものをねだることもないでしょう。
自身の「相対評価」は身を助ける
絶対評価も重要ですが、人間社会においてより重要なことは「相対評価」です。
※ 相対評価:全体の中で〇%、△番目といった具合に、組織の中で相対的に評価すること
絶対評価:あらかじめ明確な基準を設けて、それをクリアしたか / してないかで評価すること
(例) テストの平均点と比較して高い / 低いで評価する → 相対評価
平均点が高くとも低くとも、何点だろうと事前に設定した合格点をもとに評価する → 絶対評価
他人と比較することは悪いことのように扱われていますが、実は私たちの社会においては絶えず相対評価がくり返されているのです。
(例) 〇〇さんはできるけど、△△さんはできない、これくらい□□さんでもできるのに、等。
なので、自分の強み・弱みは、どれくらい強いのか / 弱いのか含めて、ぜひ検討しておいてください。
また、ない現状について考察することも効果的です。
・なぜないのか
・獲得する術はないのか
・獲得可能とすれば、何をすればどれくらい可能か
・獲得不可能とすれば、なぜ不可能なのか
そうすれば、ねだるというより「考察する」というスタンスになります。
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